スポーツには古傷を治癒する力があるとよく言われますが、このことは南アフリカにおけるラグビーの歴史を振り返れば自ずと理解できます。ラグビーは一国の命運を左右する力を備えており、そのパワーはここ日本にもおよび始めています。
南アフリカで全人種による初の民主的選挙が実施された1994年以降、ラグビーは多様な人種・民族で構成される南アフリカを「虹の国」としてひとつにまとめあげる過程において重要な役割を果たしてきました。そして南アフリカ代表チームであるスプリングボックスは、これまでにラグビーW杯で2度の優勝を果たした世界最強チームのひとつとして、数多くの栄誉を獲得しています。
南アフリカで開催された1995年のラグビーW杯において、スプリングボックスは初出場で初優勝という偉業を成し遂げました。当時のネルソン・マンデラ大統領がスプリングボックスでキャプテンを務めたフランソワ・ピナールに優勝トロフィーを手渡す瞬間を収めた写真は、虹の国=新生南アフリカの誕生を象徴する場面として、現在に語り継がれています。
当時の南アフリカの状況は、ネルソン・マンデラ役を演じた名優モーガン・フリーマンとピナール主将役のマット・デーモンが共演したクリント・イーストウッド監督による映画「インビクタス」で見事に描写されています。
スプリングボックスのメンバーに選出されることは南アフリカの多くの少年たちの夢であると同時に、親にとっても最高の誇りとなります。ラグビーは南アフリカの週末の社交場、とりわけ代表チームの試合がある時には大きな話題となるのです。
南アフリカで人気を集める国際ラグビーの舞台のひとつは「スーパーラグビー」。南半球のラグビー強豪国であるニュージーランド、オーストラリア、南アフリカのクラブチームが世界最強の名誉を懸けて争うリーグで、2016年シーズンからは日本とアルゼンチンのチームによる参戦も決まっています。そしてもうひとつが「カリーカップ」と称される地域別のチームの間で争う国内リーグとなります。
南アフリカで最大の収容人数を誇るラグビー競技場は、ヨハネスブルグ近郊のソウェトにあるFNBスタジアム。94,000人を収容する巨大スタジアムでは2010年以降、スプリングボックスによる試合が毎年開催されています。この他、南アフリカを代表するスタジアムにはヨハネスブルグを拠点とするライオンズのホームグラウンドであるエリス・パーク、プレトリアを拠点とするブルズのホームであるロフタス・ヴァースフェルド、ケープタウンを拠点とするストーマーズのホームであるニューランズ、ダーバンを拠点とするシャークスのホームであるキングス・パーク、ポートエリザベスを拠点とするキングスのホームであるネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアム、ブルームフォンテーンを拠点とするチーターズのホームであるフリーステート・スタジアムなどが挙げられます。
南半球に位置する南アフリカのラグビーシーズンは3月の後半から8月上旬までとなりますが、オリンピック競技となる七人制など様々な形式のラグビーが年間を通じて催されています。真夏を迎える1〜2月はラグビーには不向きな時期ですが、ビーチでのタッチラグビーのトーナメントが頻繁に催されており、最近では人気を集めています。
2015年ラグビーW杯イングランド大会では日本代表ブレイブ・ブロッサムズの活躍が世界中で賞賛され、日本でのラグビー熱も一気に高まっています。そして2016年のリオデジャネイロ五輪より競技種目に加わる七人制ラグビーには男子・女子ともに日本代表の出場が決定しており、2019年にはアジアでは初となるラグビーW杯が日本各地で開催されます。南アフリカで人気ナンバーワンのスポーツ、ラグビー。これからは日本でも目が離せません!