「レインボー・ネーション〜虹の国」と称される南アフリカはアパルトヘイト撤廃後、2014年に民主化20周年を迎えます。今日では数多くの民族が互いに尊重し合いながら共存する場面を、日常生活の中に見て取ることができます。
海に囲まれた島国に暮らしている私たち日本人には、文化の多様性といってもピンと来ない方も多いかと思いますが、南アフリカを訪れる世界各国からの旅行者も多様性との出会いには驚く場面があるといいます。一例を挙げると、公用語には英語、アフリカーンス語、ズールー語、コサ語、ソト語など11種類の言語が存在しています。
文化の多様性は南アフリカならでは魅力的な財産のひとつ。民族というくくりで見てみるとサン族をはじめ現在はズールー族、コサ族、ンデベレ族、スワジ族へと枝分かれしたングニ族、南部、北部そして西部のソト族とツワナ族を含めたソト・ツワナ族、そしてツォンガ族とヴェンダ族が存在。これにヨーロッパやアジアからの移民や、異なる人種が混ざり合った人々が共存しています。自由と民主化の浸透にともない、南アフリカの民族はこれまで以上に多様性を進化させつつ、互いの文化を理解しながら融合しているのです。
様々な民族による文化の多様性をわかりやすく表しているものは、なんといっても料理です。マレーシアで生まれたキャセロール(鍋料理)の”ボボティ”は南アフリカを代表する家庭料理のひとつですし、インド系の人々によって調理されるスパイシーなカレーは南アフリカ人の大好物。インド洋と大西洋というふたつの大海に面することから新鮮なシーフードも豊富ですし、アフリカの大地で育つ動物の肉やソーセージの“ブラーイ”(南アフリカのバーベキュー)は週末のホームパーティの定番料理、といったように食卓に並ぶ料理で多様性を体感することができます。
南アフリカの文化の多様性は音楽にも見て取れます。文化的背景が異なるからこそ、互いの魅力を称賛しあえるのです。例えば「Nkosi Sikelel’ iAfrika」という南アフリカの国歌は英語やアフリカーンス語、コサ語など多言語で歌うことができますし、ラジオではジャズをはじめクワイト、ハウス、ラップ、アフリカン・ゴスペル、クラシック、ロック、ポップ、伝統音楽など多彩なリズム&サウンドが楽しめるのです。
アートの分野で際立ったセンスを放つンデベレ族は、女性たちが身にまとう色とりどりの民族衣装やアクセサリー、住居に描かれた幾何学模様の壁画などで知られています。独BMWの依頼でクルマをキャンバスに見立ててアートペイントを施したことで知られるエスター・マフラングさんに代表される世界的にも有名なンデベレ・アーティストが存在すること、またピカソやピエニーフの作品の傍らにズールー族の手による伝統的なウィービングやビーズの作品が置かれているアートギャラリーが存在するのをご存知の方もいるはずです。
またファッションやデザインの分野においても、南アフリカ出身の若手デザイナーがアフリカの伝統とヨーロッパの最高級オートクチュールの要素を融合した独自のスタイルを確立するなど、世界的にも注目度が高まっています。都会のストリートでは伝統的なビーズやブレイズ、デザインパターンが世界的な一流ブランドとも融合し、独創的かつピュアな南アフリカの一端と出会うことができます。
文化の多様性は間違いなく南アフリカの魅力であり、異なる文化や思想を尊重し合いながら、融合を遂げている段階にあると言えるのではないでしょうか。