ボルダーズビーチのペンギンはこの上なく有名で、そのよちよち歩きがたまらない魅力として毎年、約6万人の観光客がサイモンズタウンを訪れボルダーズビーチのペンギンを写真に収めたり、観察したりしています。
ボルダービーチは今も世界で唯一、近くに接近してアフリカペンギンを見ることができる場所です。ケープタウンのペンギン観察は、海岸を横切って作られた遊歩道と、南アフリカ国立公園によって管理されている案内所が設置されていることで、より簡単に楽しめるようになりました。
アフリカペンギンはかつてその騒々しい鳴き声から、ジャッカス(雄ロバ)ペンギンと呼ばれていました。ナミビア南部からポートエリザベスにかけての地域にコロニーを作って繁殖します。しかし環境汚染、海鳥による卵捕食、彼らが好む繁殖地のグアノ(海鳥などの糞の堆積物)が削り取られてしまったために、アフリカペンギンは危機に陥っています。種全体としては多くの脅威に晒されており、この水辺に暮らす飛べない鳥は絶滅危惧種に指定されています。
ボルダーズビーチのアフリカペンギンは、都会近くにコロニーを形成する珍しい例の1つです。ケープタウンのペンギンコロニーが初めて知られたのは1983年、1組のつがいがボルダーズのフォクシービーチで発見された時のことです。ペンギンたちはダイアー島からフォルス湾にやって来たのです。当時のフォルス湾は商業的漁業が禁止されていました。そのため、餌が豊富で繁殖にも適した場所を見つけたペンギンたちは、ボルダーズビーチに定着し、その数を増やしていきました。
しかし約30年後、ボルダー海岸のペンギンたちは困難な状況に陥ります。車や人間の存在、繁殖地争いのために、ペンギンたちは危険な環境に巣を作ることになり、その巣は捕食生物や自然の脅威に晒されやすくなってしまいました。気候変動の影響で餌となる魚が減り、悪天候の頻度が増えたことも影響して、ペンギンの雛の数が激減しています。
そこで雛鳥の減少に歯止めをかけ、安全な繁殖環境を作り出そうと、ボルダーズビーチ公園の管理事務所は人口巣箱を設置しています。また、南アフリカ沿岸鳥保護財団(SANCCOB)とダイアー島保全トラスト、南アフリカ国立公園も貴重なサイモンズタウンのペンギンの保護活動に取り組んでいます。